JAL-AIが採用した「Phi-4」とは?注目の小型AIモデルの特徴と活用事例

2025年6月24日火曜日

AI IT

Phi-4とは何か?JAL-AIにも採用された小型AIモデルの正体

2025年にJALが発表した独自のAI基盤「JAL-AI」。その中核に採用されたのがMicrosoftの小型AIモデル「Phi-4(ファイフォー)」です。しかし、ニュースを聞いて「そもそもPhi-4って何?」「GPTとどう違うの?」と思った方も多いはず。本記事では、その疑問に答えるべく、Phi-4の概要、特徴、活用ポイントを解説します。

Phi-4とは何か?

Phi-4は、Microsoft Researchが開発した「SLM(Small Language Model:小型言語モデル)」です。GPTのようなLLM(大規模言語モデル)と同じく自然言語処理を行うAIモデルですが、そのパラメータ数は数十億に抑えられており、動作が軽量でコストも低く抑えられるのが特徴です。

大規模モデルに比べて学習データや計算資源のコストが大幅に少なく済みながら、対話応答やテキスト生成においては非常に高いパフォーマンスを発揮します。特に、Phi-4は「textbook-quality」と呼ばれる教材品質の厳選データで学習されており、単なるWebスクレイピングに依存しない設計がされています。

このため、知識の正確性や論理性に優れ、過剰な知識量を持つGPTシリーズとは異なり、業務特化型用途に向いているという評価を得ています。

なぜPhi-4が注目されているのか?

2024年末から2025年にかけて、生成AIの導入が企業レベルで加速していますが、多くの企業が抱える課題は「コスト」「応答速度」「セキュリティ」の3点です。これらの課題を同時に解決できる可能性を示したのがPhi-4です。

例えば、GPT-4を活用するには強力なGPUリソースとクラウド環境が必要ですが、Phi-4はオンプレミス環境や省電力なエッジデバイスでも運用可能であり、社内データを外部に出さずにAIを活用できる点が大きな魅力となっています。

また、Phi-4はAPI経由のカスタム展開が容易で、Azure AI Studioではノーコードでもテスト・デプロイが可能なため、非エンジニアでも業務導入しやすいのが特長です。

JALがPhi-4を採用した理由

JAL-AIにおけるPhi-4の採用は、業務の実用性と運用効率を両立するという観点から極めて理にかなっています。以下のような理由が背景にあります:

  • 航空業界特有のリアルタイム性や応答速度への対応
  • セキュアな社内インフラ上での運用要件
  • 現場でのスムーズなナレッジ活用と問い合わせ対応の自動化

例えば、社内のカスタマーサポート担当者が使うチャットボットにPhi-4を組み込むことで、FAQ回答の精度と速度が向上し、対応工数を削減する事例が想定されます。

どんな用途に向いているのか?

Phi-4の軽量設計は、あらゆる部門・業種でのユースケースに展開できます。以下はその一例です:

  • 社内ヘルプデスク:業務システムの操作方法や手続きの問い合わせに即答
  • 会議議事録の要約:会話テキストを自動で要点抽出・文書化
  • 営業支援:商品説明や提案文の自動生成
  • 製造・保守マニュアルの自動整備:現場情報をもとに手順書を更新

また、Phi-4はRAG(Retrieval-Augmented Generation)との相性も良く、ナレッジ検索とテキスト生成を組み合わせたシステムの中核として活用できます。

Phi-4を試すには?

Microsoft Azureの「AI Studio」から誰でも利用できます。ノーコードでも利用可能なGUIが提供されており、API経由で既存システムに組み込むことも簡単です。デモを確認しながら使い方を学ぶことができ、社内PoCにも適しています。

また、NVIDIAのNGCプラットフォームや、独立したローカル環境でも検証が可能なようにパッケージ展開されており、選択肢の幅が広がっています。

まとめ:Phi-4は業務AI導入の現実的な選択肢

JAL-AIに代表されるように、Phi-4は「現場で動くAI」として非常に実用的なモデルです。高性能なLLMでは実現が難しいリアルタイム性やコスト制約をクリアしつつ、業務ニーズに応じたカスタマイズも可能です。

今後、業界を問わず多くの企業がAI導入を検討する中で、Phi-4のようなSLMの選択肢がますます注目を集めると考えられます。規模や予算に制限がある現場でも、生成AIの効果を体感できるきっかけになるでしょう。